特集インタビュー
自分の手で企画を動かし、プレーヤーとして行動できる場所を求めて
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  • 小川拓哉さん

    福岡県出身
    30歳になる直前の2015年に転職し、夫婦で臼杵市へ移住
    (情報は2021年取材時のものです)

福岡出身で、大学進学を機に18歳で上京した小川さん。大学院を出た後は、東京の大手企業に5年程在籍。30歳になる直前の2015年に転職し、夫婦で臼杵市へ移住してきました。現在では青年会議所の理事長を務めるなど、積極的に地域活動にも参加しています。移住のきっかけや現在の仕事について、お話をうかがいました。

 

ゼロから始める事業、自らがプレーヤーとなり動ける仕事に挑戦

東京で5年ほど、シンクタンクで政策分析業務に従事していた小川さん。クライアントは環境省や農林水産省など省庁や役所、民間企業でした。調査しレポートを作成したり、審議会・研究会等の運営を担ったり、それらをもとに政策を考えたりするのが主な仕事です。

「仕事が好きでやりがいもありましたが、ずっと東京に住むのではなく、地方でこれまでの経験や知識を生かした仕事をしたいという気持ちも持っていました。そんなとき、『臼杵市で林業事業を立ち上げる話があるから、仕事をしないか』と誘われたのが移住のきっかけです。何もない状態から事業に携われる機会はめったになく、チャンスだと思い決意しました。ちょうど30歳直前で区切りがよかったのもあります」

当時は結婚してまだ1年くらい、奥さんは妊娠中。しかし、親戚や知人誰一人おらず、縁もゆかりもない臼杵市への移住が決まりました。

「以前の会社は大企業で、人事・労務や総務など直接かかわらなくてよい仕事も多く、仕事のサイクルや、自分たちでやるべきことがはっきり決まっていました。現在は少人数の会社で自らがプレーヤーです。自分で事業をしなかった以前とは違い、己の働きが業績に直結して、反応がダイレクト。自分の手で動かしている実感がありますね」と小川さん。

 

エネルギーの地産地消を目指して

小川さんは移住当初、林業に携わり森林整備を行いました。過密になった木を伐採する作業・間伐を実施すると、森の状態が目に見えて変わり、自身の手でやり遂げた実感を得られたそうです。

現在所属している「うすきエネルギー」が目指すのは、地域のエネルギーを地産地消すること。市役所・造船所・福祉施設などに電気を売ったり、地域のなかでできるエネルギーを会社で買い取って売ったりしています。太陽光、廃棄物を使ったメタンガス、間伐材を使った発電などに携わり、地域全体が目指す脱炭素エネルギー推進の手助けを行っています。

また、市と連携した環境教育にも力をいれ、小川さんは講師として、小中学生向けに環境の講義をすることもあるそうです。

ただ電気を安く売るだけでなく、子育て世代への割引、電気代の一部を青少年事業へ寄付、東京のお客様に臼杵市の特産物を返礼するなど、地域貢献となる活動を次々と展開しています。

 

“すでにあること”のアレンジから生まれる新企画

新企画を立てるときには、すでにあることを臼杵に合うようカスタマイズするという小川さん。

「新しい事例や取り組みを見て、ここでもできないか?と、考えることから始まります。いろいろアンテナを張り、他の動きを気にするようにしていますね。現状で何ができるか、どうすればいいかを考えるんです。
そのためには、いろんなことを興味もってやったり、仕事以外のこともやったりして。それが結局仕事に結びついたり役立ったりすることが多いです。」

事業を進めていくうちに、電気を通して地域の人たちとつながりもでき、新たなやりがいも生まれるようです。

仕事が大好きで、朝から晩まで仕事漬けだった東京での生活。子供が生まれ移住したことで、現在は家族と過ごす時間が増え、時間的な余裕も増えました。

 

環境問題への関心のきっかけは父と過ごした山

転勤族で、日本全国の山へ行くのが好きだった小川さんのお父さん。そのお父さんに連れられて小さい頃から自然と親しむうち、環境への関心が高まりました。大好きな自然環境をこのまま後世に残したい、そんな思いが小川さんの進む道を決定づけたのです。

大学では森林政策を学び、フィールドワークで日本各地に出向きました。周囲にコンビニも見当たらない地方に行くこともしばしば。環境サークルにも所属し、学園祭のごみ問題を解決したり、外部から先生を招いて環境問題をテーマにした講義を企画したり、折に触れて環境問題に取り組み行動してきました。

大学時代の経験があったからこそ、臼杵市に移住してすぐ感じたのは「思ったよりも都会」ということでした。買い物に不自由はしないし、少し大きな買い物も大分市まで足を延ばせばすぐ、という環境だったからです。

 

東京でなく地方でもやりたいことができる時代

移住してすぐは情報収集がうまくいかなかったり、参加したい勉強会が東京でしかなかったり、地方にいる不便さを感じることもあったという小川さん。しかし、新型コロナの影響で、オンラインでできることが増え、東京との差が薄なくなってきたと感じています。

「東京にこだわらなくても、できること・やりたいことは探せば広がっています。移住するには、家族や給与など、人それぞれに問題があるでしょう。けれど、それを乗り越えて地域に飛び込んでみて自分にマッチする環境を見つけられれば、これまでとは違った楽しさがあると思います」と、移住を考えている人へ、小川さんからのメッセージです。

 

見ず知らずの地に飛び込み、試行錯誤しながら人の輪を広げ、臼杵市での暮らしを楽しむ小川さん。人柄のよさと、親しみやすい笑顔、そして自ら飛び込んで行う実行力が、周囲の人々から受け入れられ、頼りにされているようです。

これからも新しいことに取り組み続け、周囲と一緒になって未来を切り拓いていくことでしょう。

PROFILE
  • うすきエネルギー株式会社 統括部長
    小川拓哉さん

    福岡県出身
    30歳になる直前の2015年に転職し、夫婦で臼杵市へ移住
    (情報は2021年取材時のものです)

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